久々に、寝る間際に、大好きな物語を読んだ。
色んな理由があって、
滅多なことがないと読まないようにしている。
だけど昨日は、滅多な理由があってかなくてか、
自分でもよくわからないけれど読んでいた。
この物語はとっても不思議で、
音が聞こえなくなっていく感覚や、
見えるものに霞がかっていく感覚に、
そういう不可解な感覚に、
自分が支配されていく気分になる。
読み終わると、それなりに傷つくのだけど、
頭か心にあるパズルみたいなものも、
もとあった位置に丁寧に戻されているのがわかる。
元気にはなれないけれど、正常になっている。
そして、久々に穏やかな夢を見た。
大きな図書室のような場所で、
2年ほど前に仲の良かった人と一緒に居た。
そして気がつくと賑わう道に面した家にいて、
私は窓から通りを見下ろして、誰かと一緒に居た。
途中で人が変わって、二番目に私の隣に現れたのは、
今、仲が良い友達だった。
映画をつけたり、絵を描いたりして、楽しかった。
別の友達も出て来て、
アイスを食べながら、羨ましそうに私達を見ていた。
「おいでよ」って言ってあげられなかった。
仲はいいし、色々話せるけれど、云えなかった。
生きていくべき世界が、違うことは夢でも分かってる。
最初に一緒に通りを見下ろしたのは、
あれは一体誰だったのかしら。
懐かしい感じがして、凄く楽しかったのに。
感傷なんか抜きで、この人となら呼吸できる思ったのに。
「思い出せない一人」が確かに存在するなら、
私の昨日の夢は成立しない。
私の昨日の夢の世界は破綻してしまう。
誰もみんな、思い出せない彼の「背景」でしかない。
物語の最後に、主人公はあたらしい物語へ移る。
これまでのことから脱皮するみたいに、別の話へ向かう。
変わることは、難しいことだと思う。
だけど、「移る」ことは案外と気が楽なもので。
それまでの考え方も心持ちもそっくりそのまま、
かたちも温度も色合いも、そのまま置いてみる。
そして、素材だらけの別の話へ移れば良い。
何もかも、新しくつくっていけばいい。
怖くなったら、むかしの話を眺めてみれば、
そこには何もかも変わっていない世界が残ってくれる。
確かにそこに居たことに、安堵のため息がつける。
私は、移ることもできず、変わることも怖がる。
だけどある程度は勝手に進んで変わっていくもので、
ずっとここにいたい、と思っていた場所からは、
とっくにずれているというのに。
この物語において私の願い事は、ひとつしかない。
だけどそれは、もう絶対に、それだけは、叶わない。
だから、移る物語を探さないといけなかった。
もっと早くから、探しておくべきだった。
今の物語の中で苦しんだり、悲しんだりしても、
そして時々、幸せなふりをしてみても、
誰も幸せになれない。
夢の中で、目に映った全てを背景に変えたのは、
今の物語のたったひとつの願い事なのか、
新しい物語の鍵になる人なのか。
いずれにせよ、月の影に追いやってしまった。
なんて、くさいことを言って、
何かを中和させようとしている自分がくだらない。