2012年2月8日水曜日

ムーンライト・シャドウ

久々に、寝る間際に、大好きな物語を読んだ。

色んな理由があって、
滅多なことがないと読まないようにしている。
だけど昨日は、滅多な理由があってかなくてか、
自分でもよくわからないけれど読んでいた。

この物語はとっても不思議で、
音が聞こえなくなっていく感覚や、
見えるものに霞がかっていく感覚に、
そういう不可解な感覚に、
自分が支配されていく気分になる。

読み終わると、それなりに傷つくのだけど、
頭か心にあるパズルみたいなものも、
もとあった位置に丁寧に戻されているのがわかる。
元気にはなれないけれど、正常になっている。



そして、久々に穏やかな夢を見た。

大きな図書室のような場所で、
2年ほど前に仲の良かった人と一緒に居た。

そして気がつくと賑わう道に面した家にいて、
私は窓から通りを見下ろして、誰かと一緒に居た。
途中で人が変わって、二番目に私の隣に現れたのは、
今、仲が良い友達だった。
映画をつけたり、絵を描いたりして、楽しかった。
別の友達も出て来て、
アイスを食べながら、羨ましそうに私達を見ていた。
「おいでよ」って言ってあげられなかった。
仲はいいし、色々話せるけれど、云えなかった。
生きていくべき世界が、違うことは夢でも分かってる。


最初に一緒に通りを見下ろしたのは、
あれは一体誰だったのかしら。

懐かしい感じがして、凄く楽しかったのに。
感傷なんか抜きで、この人となら呼吸できる思ったのに。

「思い出せない一人」が確かに存在するなら、
私の昨日の夢は成立しない。
私の昨日の夢の世界は破綻してしまう。
誰もみんな、思い出せない彼の「背景」でしかない。



物語の最後に、主人公はあたらしい物語へ移る。
これまでのことから脱皮するみたいに、別の話へ向かう。
変わることは、難しいことだと思う。
だけど、「移る」ことは案外と気が楽なもので。

それまでの考え方も心持ちもそっくりそのまま、
かたちも温度も色合いも、そのまま置いてみる。
そして、素材だらけの別の話へ移れば良い。
何もかも、新しくつくっていけばいい。

怖くなったら、むかしの話を眺めてみれば、
そこには何もかも変わっていない世界が残ってくれる。
確かにそこに居たことに、安堵のため息がつける。


私は、移ることもできず、変わることも怖がる。
だけどある程度は勝手に進んで変わっていくもので、
ずっとここにいたい、と思っていた場所からは、
とっくにずれているというのに。

この物語において私の願い事は、ひとつしかない。
だけどそれは、もう絶対に、それだけは、叶わない。

だから、移る物語を探さないといけなかった。
もっと早くから、探しておくべきだった。

今の物語の中で苦しんだり、悲しんだりしても、
そして時々、幸せなふりをしてみても、
誰も幸せになれない。


夢の中で、目に映った全てを背景に変えたのは、
今の物語のたったひとつの願い事なのか、
新しい物語の鍵になる人なのか。
いずれにせよ、月の影に追いやってしまった。

なんて、くさいことを言って、
何かを中和させようとしている自分がくだらない。