本当は、絵や文字を描いて生きていきたい。
喋らず、言葉の使い方を忘れて
「おはよう」の挨拶代わりに、
一緒に暮らしている人の筆を洗う様な生活がしたい。
幼稚園に通っていた時、
何よりも楽しかったのは、
工作の時間に綺麗な形の箱を見つけること。
私の中には黄金比のような物があって、
そのかたちに触れたり、見たりすることが
何よりも好きでした。
他の子はきちんと作品展にむけて作品を作るのに、
私はいつも箱探し。
他の子の作品に並べて、
その箱に色紙を巻き付けたものを出したこともあり、
なかなかシュールな雰囲気を醸し出していました。
お絵描き教室にも通っていて、
他の子は水彩から油彩と色々覚えていくのに、
私はいつまでたっても、
手の平いっぱいに絵の具を付けて、
大きな木の絵を描いたり、
体に絵の具をつけることに一生懸命でした。
油彩が好きになったのは高校生のことで、
魅力が分かるようになるまで、
随分と時間がかかったものです。
絵を描くことは、
文字を書くことをも蝕んでいきました。
私は、文字を書いている時、
絵を描くときと同じ感覚を持っています。
大げさに言えば、文字も「描く」ものです。
絵や文字を描く時、
私の頭の中は考えることを辞めます。
色と線と音だけの世界で、微かに呼吸します。
これは、もの凄く楽な瞬間です。
そして、とっても気持ちがいい時間です。
感動した時、悲しい時、嬉しい時、
私は目の前の物事をうまく言語化できません。
とにかくこれは不便でコンプレックスなのですが、
もしかしたらそれは、
色や音に浸っている感覚があるからかもしれません。
これまた、上手く言えないんですけど。
もし私の頭の中や、
見えている、聞こえている世界をわかってくれるなら、
そこに言葉はきっと必要なくて、
心地よいかたちや、快い響きを愛でる様な、
そんな生き方ができるのだと思うと、
それはとっても楽そうでいいな、と思うのです。