2015年8月10日月曜日

小さな花

帰り道、駅前はまだ明るい。

ファーストフードの店に、
何年ぶりかに入ってみた。
迷って迷って、ジュースをひとつ。
添加物の塊と分かっていても、たまにはいいじゃん。

こういうお店を、昔から母は嫌った。
稀にある、母が外出した日に父に頼んで連れて行ってもらった。
内緒で食べるあったかいハンバーガーは、
いつもどこか甘い匂いがして、おいしかった。
ジュースが底を尽きるとき、汚い音を立てた。
お母さんには絶対怒られるけど、
お父さんは怒らなかった。
弟は笑った。
歯の抜けた間抜けな顔で、小さく笑ってた。


でも自分が母親になったら、
きっと同じことを言うんだろうなと思う。
なんとなく、そういうものなんだろうなぁ。


線路脇の緩い坂道を下りながら、ジュースは半分になる。
暑いから、あっという間に無くなっていく。

通り道に、小さな小さな丘の様なものがある。
色んな種類の花がいつもきれいに咲いていて、
なぜかどれも小さい花。
少し上を覗き込むと、小さいお墓があった。
きっと毎日手入れしていないと、あんな風に咲き続けない。
すごいなぁ。

ほんと、すごい。

余計なことを考えそうになると、
ジュースが底を尽きそうに、ぐずぐず言い始める。

遠くから通過電車がやってくる。
轟音が右耳の後ろから横を走る。


電車の通過音に隠れて、
ジュースの底を大きな音を立てて吸い上げてみた。


オッケー。今日も生きてる。