ファーストフードの店に、
何年ぶりかに入ってみた。
迷って迷って、ジュースをひとつ。
添加物の塊と分かっていても、たまにはいいじゃん。
こういうお店を、昔から母は嫌った。
稀にある、母が外出した日に父に頼んで連れて行ってもらった。
内緒で食べるあったかいハンバーガーは、
いつもどこか甘い匂いがして、おいしかった。
ジュースが底を尽きるとき、汚い音を立てた。
お母さんには絶対怒られるけど、
お父さんは怒らなかった。
弟は笑った。
歯の抜けた間抜けな顔で、小さく笑ってた。
でも自分が母親になったら、
きっと同じことを言うんだろうなと思う。
なんとなく、そういうものなんだろうなぁ。
線路脇の緩い坂道を下りながら、ジュースは半分になる。
暑いから、あっという間に無くなっていく。
通り道に、小さな小さな丘の様なものがある。
色んな種類の花がいつもきれいに咲いていて、
なぜかどれも小さい花。
少し上を覗き込むと、小さいお墓があった。
きっと毎日手入れしていないと、あんな風に咲き続けない。
すごいなぁ。
ほんと、すごい。
余計なことを考えそうになると、
ジュースが底を尽きそうに、ぐずぐず言い始める。
遠くから通過電車がやってくる。
轟音が右耳の後ろから横を走る。
電車の通過音に隠れて、
ジュースの底を大きな音を立てて吸い上げてみた。
オッケー。今日も生きてる。